がんばっている社員と幸せになるために

　いま、社員といっしょにめざしている目標があります。それは「お給料３ヶ月分のボーナスを出すこと」です。理由は、社員といっしょに幸せになりたいから。その方法の一つが、お給料の３ヶ月分です。

がんばってくれている社員にできるだけのことをしたい。だから、なるべくたくさんのボーナスを出したいのですが、これまでは、出せてもせいぜい１ヶ月分でした。３ヶ月分というまとまった金額を出したことはありません。

でも、出したいんです。

中には、「出したからといって、何も変わらないよ」と言う人もいますが、何かの折り、社員に「３ヶ月分出したい」と言ったら、「ぜひ、そうしてほしい」という要望が返ってきました。社員の望みを叶えたいと思っています。

温泉旅館のお部屋でBBQ

　しかし、ボーナスを出そうにも、元手がなければ出すことはできません。ではどうするか。出てきた答えは「新事業を行い、業績を上げる」でした。

　業績を上げるためには、さらにお客様に喜んでいただく必要があります。喜んでくださった対価として、お金を払っていただけるからです。喜泉では、これまでもお客様の喜びに焦点を当て、サービスをご提供してきましたが、もっともっと喜んでいただきたいと思っています。

　新事業として考えたのは、旅館の中で楽しむ「全天候型BBQ」です。あまり使っていないお部屋を改装し、雨でも雪でもお部屋の中でバーベキューを楽しんでいただけるようにしました。

　当初、注目を浴びている「グランピング」をやろうと考え、専門のコンサルタントに入ってもらい、計画を進めていました。ところが、途中でそのコンサルタントが資金ごと姿を消してしまったのです。さすがに途方に暮れました。

しかし、新事業を立ち上げたいという気持ちは変わりませんでした。行政が実施している補助金事業に申し込み、何とか資金を確保し、ようやくいま、BBQ事業を本格的に始められる状態になりました。

組織が変わるたった一つのポイント

この新事業を、私はスタッフといっしょに作り上げていきたいと思っています。スタッフたちは思ったより慎重に事を運ぼうとしてくれています。

お部屋でバーベキューした場合のにおいはどうか、安全性はどうか、メニューはこれでいいかなど。私が気づかないようなところまで指摘してくれています。

新しいことを始めるときは、誰でも慎重になります。でも、「必ずこれをやりたい」という願望があれば、自分が何ができるかを考え、前に進んでいけます。

お客様のために何ができるか。それを考えて実践できるようになるのが、成長だと思います。そんな人が増えたら、組織は大きく変わると思っています。

BBQ事業は、日ごろお客様と直に接することのない調理場のスタッフにとって、お客様の生の声を聴くよいチャンスになります。お客様の顔を見ながら食材を調理し、反応を確かめることで、きっとさまざまな気づきを得ると思います、

スタッフはみんな、いいものを持っています。そして、自分の人生を良いものにしたいと思っています。その願いを、いっしょに叶えていきたいんです。私はコミュニケーションが下手なので、このことをうまく伝えられていないかもしれませんが。

自分の願望に気づき、成長できる人になれるよう、社内研修も行っていきます。「なんで研修なんか受けなければならないんだ。仕事だけしとけばいいじゃないか」と思うかもしれません。でも、何か一つでも気づきがあれば、人生は良くなる。その機会を、継続的に設けていきたいと考えています。